小島大虎 ロードアート ギャラリー

旅行風景画のインターネット・ミュージアム

たんぽぽ / Dandelion

 北海道の根室でないとこのたんぽぽは描けませんッ!というわけでは全くありません。 北海道旅行をしたら、沢山のたんぽぽがニコニコ咲いているのでまあ描いてみるか、というわけで描きました。 ただそれだけです。 ただしいつもはやらない絵手紙風に描いてみました。 「手紙」じゃないけど。
 五月の北海道・根室。 霧の中、林の中の道路を歩いていると、ひっそりと小さなガソリンスタンドがあり、中のロビーみたいなところで休憩しようと入ったら、思いがけず若い兄妹のような男女の店員が明るく出迎えてくれた。
 イケメン風のさわやか青年が「今日は寒いですよねえ」と言うので、「今気温は何度くらいなんですか」と訊ねたら、彼と同じガソリンスタンドのスタッフ・ユニフォームを着て帽子をかぶった女の子が、壁掛け時計のような丸い気温計を見ながら「いま七度ですね」と言う。 五月なのに七度なんだ。… 道東の人達は、真夏でも夏日にはまずならないから海水浴などはしないほどだと以前から聞いてはいた。
 旅行中という話をして、この辺りで美味しいものは何ですか、と聞いたら「何だろね」とその若い男女が顔を見合わせた。 妹ふうの彼女が思い出したように「駅前のコンビニの『とり弁当』は美味しいですよ!あれはオイシイ。 高校の時よく食べましたもん。」と言った。 いや本当は何とか食堂のいくら丼、とか何とか寿司の海鮮どんぶり、といった店の名前や観光名物みたいな答えを予想していたので、地元の若者のあいだで「本当に人気」のものを提案されて、その食い違いが少し可笑しかった。
 そこを出て、夕方ホテルに帰る頃、そのコンビニの付近を通ったので入ってみたら、やっぱり「とり弁当」があり、まあ試しに食べてみるかと買ってホテルで食べてみたら本当にうまかった。 兄妹みたいなあの二人を思い出しながら、美味しく頂いた。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040502
PICTURE:218×174mm 
FRAME:378×287mm/G2

 

 

霧 / Fog

 北海道の網走で泊まっていた民宿は古めかしくて薄暗くて、軽く三十年前の風情だった。 客室はそんなでもなかったが荷物を置いてすぐにテレビをつけたら、今度はまた山
口百恵の映像が流れ「夢先案内人」という歌が始まるところだった。 懐かしのベスト10とかいう歌番組だった。 タイムスリップでもした感覚だったが、長い移動で少し疲れて
いたのでそれをそのまま楽しんだ。 古い歌だけどメロディーも美しくて大好きになってしまった。 
 網走だけでなく、根室などでもよく霧に出くわした。 風景が見えないではないか。 いや、そういう風景もあるのか。 ■

 

 
Artwork & Note: DAIGO KOJIMA
2004/11040501 
PICTURE:328×224mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

網走の海 / Sea Of Abashiri

 五月だったが最高気温は十度もなく、寒かった。 向こうに見えるのは知床半島。 本当はどんどん半島の先の方まで行ってみたかった。 数多くの野生動物が生息していると 聞いていて、恐れ多い気がしている。 
 この海岸からもう少し内陸に、牛を飼い牧場を営む七十代の男性が、子供の頃はこの浜で食べられる植物がいっぱい穫れたが、「業者」が根こそぎ持っていって何も無くなっ たと言っていた。 絶滅、根絶やしさせたんだ。 そういうことが本当にあるんだ。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040503
PICTURE:329×222mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

海辺の工事現場 / Seaside Construction Site

 沖縄のエメラルドグリーンの美しい海を背景に工事車両が停まっていて、静かで誰もいなかった。 
 都会の人々が休暇でやって来る観光地というのは、何かしら裏方の、準備の仕事があるだろう。 今のこの時間は、準備の仕事のその準備中。 ■ 

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA
2004/11040403
PICTURE:318×228mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

竹富島の港 / Port Of Taketomi Island

f:id:kojimadaigo:20180325103851j:plain

 港で船が来るのを待っていた。 色があんまりキレイなのにはマイッた。 保護され、観光地化されて、実に平和な島で、戦争があったりたくさんの自殺者がいたなんてウソみたいだ。 ■

 

Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004

 

 

ごろごろ石の海岸 / Stony Shore

 沖縄のどこかの海岸で、台風などで打ち倒された木々に葉っぱがついていた。 放って置かれた様子が良かった。 
 石垣島にある川を河口から上流に向けてカヌーで昇っていくという体験をした。 カヌーそのものも興味深くて面白かったが、同行した地元の案内人とは年令がほぼ同じ 
だったせいか、気が合っていろいろと話が弾んでその出会い自体が楽しかった。 
 石垣島でバスに乗ってみると、乗合バスなのに運転席でラジオをかけていた。 帰りが遅くなって暗がりを走ることがあり、夕闇の中でNHKの「列島リレーニュース」を運転 
席の近くの客席で黙って聞いていた。 ラジオとはいえ全国放送である。 今いる石垣島は日本のかなり端っこの方だが、今までに旅をした地方都市や大都市など日本の各地が、 妙に身近な感じがした。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040401
PICTURE:324×223mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

岩場 / Rock Beach

f:id:kojimadaigo:20180312125604j:plain

 港から砂浜へ、路線バスで行こうとしていた。 昼食の時に立ち寄った飲食店で、近くのバス停がどこかたずねたら、店の主人が「ヒッチハイクで行ったら?」と言う。 「そんなうまくいくかなあ」 「結構、停まるよう」と。 そこで道路に出て親指を立てたら、あっけなく乗せてもらえた。 
 地元の会社の事務員をしている女性で、一旦自宅に戻ってお昼ご飯を食べて、再び仕事場に戻るところだと言う。 ヒッチハイカーを乗せることに慣れた感じだが、まるで以前から知り合いだったかのような親しい人当たりだった。
 帰りは海岸道路をただ歩いただけでクルマが停まった。 土木作業用重機を操縦する仕事の、作業着のおじさんは大変気さくで、楽しい会話を運転中ずっとしていた。 「またどっかで会えたらいいな」と快活に握手して、元気よく別れた。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2003/11040303
PICTURE:378×263mm 
FRAME:508×393mm/G4

 

 

いなか浜 / Inakahama

f:id:kojimadaigo:20180312125542j:plain

 屋久島のいなか浜と呼ばれる美しい海岸。 テレビドラマの撮影にも使われたんだ、と地元の人は誇らしげだ。 しかしそれも分かる気がする。 
 眺めていると背中で物音がしたので振り向くと、10メートルくらい先のところに一頭の鹿がいて目が合ってしまった。 まるでおとぎ話の世界だ。 ■

 

 
Artwork & Note: DAIGO KOJIMA
2004/11040301 
PICTURE:373×222mm 
FRAME:508×393mm/G4

 

 

屋久島 / Yakushima

f:id:kojimadaigo:20180312125515j:plain

 屋久島の宮之浦川の河口から島全域を見渡してみた。 中央部の雲がかかって暗くなったあたりでは雨が降っているのだろう。 
 ヒッチハイクで乗せてくれた、ある工事関係の作業着を着た恰幅のいい男性が、「屋久島では、鹿一万頭、猿一万匹、ヒト一万人。」といたずらっぽく話してくれた。
 その方は島の地形や気候の話、それに海での作業も多いらしく、海里とは何か、ノットとは何か、あるいは島では観光客をどう思っているか、などの雑談で盛り上がった。 話し振りが陽気で表現が豊かで知性的でもあり、また素朴で悠然としたところもあった。 一時間足らずだったがお互いによく喋ってそれがとても楽しく、また気が合うのが分かった。
 握手して別れたあとになって、じわじわと気づいた。 あんな味のある話ができる人とはそうは出会えないということに。 ■

 

 
Artwork & Note: DAIGO KOJIMA
2004/11040302 
PICTURE:387×174mm 
FRAME:508×393mm/G4 

 

 

岬 / Cape

f:id:kojimadaigo:20180305074950j:plain

 長崎の五島列島。 この島には四日間くらいいて、毎日行く喫茶店があった。 その街では数少ない定食屋でもあった。 
 バスに乗ってみると田植え前で、レンゲ畑がきれいだった。 バスには行きも帰りもほとんど乗客が乗っておらず、黙っているのもおかしいので運転手さんととよく世間話し 
た。
 このあたりは普段は静かで平和なところだが、トライアスロンの全国大会が毎年あると言う。 地元の人達は「じきアイアンマン(レース)があって、ホテルや民宿はいっぱいになるよう」と少し自慢するように言っていた。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040309
PICTURE:319×233mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

階段の上の雲 / Cloud Over The Step

f:id:kojimadaigo:20180305074903j:plain

 流れの速い雲が見えた。階段を上がっていくと雲に乗れそうな気がした。 
 まだホントに幼かった頃、雲は綿のようなものではなくケムリみたいな気体だと知った時にはなぜだかおおいにがっかりしたものだった。 
 旅行をして絵を描いていると、やはり天気が気になり、風や雲を追いかけることが気象を読み取ることだと知るようになる。 ほかに海で働く漁師さんや田畑の世話をする農
家の方達は、風や雲の動きで天気を読み取るのが重要だと聞いたことがある。 ある意味では風景画制作も気象条件のもとで自然を相手にした作業でもある。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040306
PICTURE:334×223mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

 

緑散(りょくさん) / Greens

 まだ四月だというのに、この日の暑さは相当なものだった。 九州・宮崎県のえびの高原に近い川の河川敷を歩き、ふと目の前を眺めると、緑色ばかりだ。 暑さで緑色の炎が燃 え広がっているような感じがした。 ■

 

Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2004/11040307
PICTURE:334×223mm 
FRAME:423×347mm/G3

 

インターステート・ハイウェイ / Interstate Highway

 アメリカ中西部のどこか。 広大な大地にまっすぐに伸びるフリーウェイ。 しかし、それにしても暑くて暑くて、陽射しも強くて真っ白なスケッチブックの画用紙に太陽光が反射してしばらく直視できない。 そんな中をじっくり腰を据えて絵を描くなど自分から干からびに行くようなものだ。 
 こんな風景をよく何も無い、と言うものの、実際に立って眺めてみると色んなものが見えてくる。 遠くに見える山々、砂漠、その地表にできるいくつもの小さな竜巻、長い貨物列車、朽ちかけた木造の家屋、まだ使っているらしき古い倉庫、ガソリン・スタンド、モーテル、レストラン、博物館のような土産物屋、…。 
 夜のドライブの途中、まだ10時か11時頃、郊外のレストランに立ち寄って休憩したことがある。 その店は70年代からそのままのような古めかしいレストランだった。 座席 
も黄ばんでいて、古臭いせいなのかわからないが、店は客がまばらで、テーブル席に一人で座っていると、すぐ隣のテーブル席にやはり一人で座っている男が一人。 彼がうしろを振り向いた時に目が合い、軽く会釈をした。 
 彼は警察学校をあと数日で卒業なのだと言う。 話し方に特徴があり、わざと低い声で男らしく落ち着いた大人の喋り方をするのだった。 今アメリカ合衆国では一年に何件 
の犯罪があって、その犯罪内容はこれまでにこういう傾向があるんだ、日本はどうなのかな、などと気さくに話した。 
 あまりにのどかな所で、犯罪については切実な感じはしなかったが、彼があまりに真面目なので、彼が様々な取り締まりや捜査などの仕事に誠実に取り組みながら、それほ 
ど出世はしないまでも定年まで勤め上げるのを私は勝手に想像していた。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2001/11010701
PICTURE:277×200mm 
FRAME:378×287mm/G2

 

 

カントリー・ロード / Country Road

 アメリカ国内をクルマであっちこっちドライブしたが、これはフリーウェイをはずれて田舎町の道をゆっくり走った時の風景。 
 昔ながらのダイナーで、早めの夕食をとり、目的地と方角だけを決めてクルマに乗って夜通しドライブしたことがあった。 
 ある街で夜になってしまい、空が明るくなった辺りに行ってみると小さな街にもかかわらず、群衆が集まっていて騒然としたお祭のようになっている。 近づいていってみる
と、ダートカー・レースというのだろうか、一人乗りの、ドアやボディのないフレームだけの小さな四輪自動車が、何台も同時にほとんど全身どろまみれでレースを繰り広げている。 まるで地方の夏祭りの様相だ。 
 実況中継のような場内放送もやかましいが、レースカーの甲高いエンジン音がまた凄まじい。 スタジアムにあるような大きな照明もあって大きな観客席スタンドもある。 
レース場は金網で二重三重に区切られており、立ち見の観客の目の前を、競技を終えた泥まみれのレーサーたちが疲れ切ってふらふらと歩いて行く。 金網デスマッチ集団泥ん
こ自動車レース。 家族連れで観に来ている人も多い。 子供たちもあっちこっち走り回って楽しそうだった。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2001/11010703
PICTURE:288×200mm 
FRAME:378×287mm/G2

 

 

ロードサイド / Roadside

 クルマを運転しながら、流れるロードサイドの風景を眺めていて、そういう風景を描きたいと思っていた。 そのきっかけとなった、とても気に入っている一枚。もっともっと研究してみたいし、たくさんいいのが描ける気がしている。
 この旅行中に、警官五、六人に包囲されてしまったことがある。 ピッツバーグの辺りだったと思うが、深夜、郊外のコインランドリーの店の前だ。 店は二十四時間営業だが誰もおらず、こうこうと照明がついていたまま。 その入口のすぐ正面の駐車場にクルマを停めていた。 洗濯を終えて荷物を乗せ、運転席で一段落していた時だった。 
 彼らは私の乗っていたテキサス・ナンバーのレンタカー(借りたのはテキサス州のヒューストンで、ピッツバーグとは千キロ以上離れている)を不審に思ったらしく、気づくとあっという間にパトカー三、四台くらいで俺のクルマを取り囲んだ。 
 二、三人が片手でマグライトの光を俺の顔や車内に当てて、もう片方の手は警棒か銃を取り出す構えをしていたようだった。 パトカーはさらに増え、警官もどんどん増えて
いるようだった。 早口で、IDを見せろ、と言っていた。 俺は一瞬何のことだか分からなかったがとっさにパスポートと国際免許証を出そうとすると、余計に彼らの影が迫っているように見えた。 マグライトの光が眩しくて大声を出しているやつの顔が見えない。 クルマを出ろと言うので、手をかざしながら、敢えてゆっくりとした動作で出ると、警官は少しばかりおだやかな態度になって、パスポートなどを見ながらいろいろ聞いてきた。 誰のクルマなのか、ここでは何をしているのか、どこに住んでいるのか、など。 問題無いと分かると、わりと親切な感じでここでは危険だからこの先にあるガソリンスタンドの辺りで休んでくれと言った。
 帰ろうとする彼らの中から一人、小柄だが筋骨隆々とした警官が親しそうに近づいて、すまなかった、しかしあんたは落ち着いていて勇敢だった、旅行を気をつけてと言った時、その表情などから、彼らも緊張していたんだと思った。 気づかないうちにこちらも怖い顔で睨みつけていたのかも知れない。 いや本当は物凄くビビっていたのだ。 しかし、簡単な職務質問さえ、まるで大捕り物ではないか、まったくアメリカってところは。 ■

 


Artwork & Note: DAIGO KOJIMA 
2001/11010704
PICTURE:277×200mm 
FRAME:378×287mm/G2